第3章 観測と測定 その2 − 量 −

 図3.1では人の身長、体重、血糖値を記録するため、それぞれのフィールドに数値を記録するものになっています。ただし、このモデルでは身長、体重、血糖値に適切な単位が付与されていないため、それぞれの数値の持つ意味が不明確となります。

身長にはcm、体重にはkg、血糖値にはmg/dLなどの単位がつくことで初めて意味のある情報となります。そこで、図3.2のように、数値と単位を組み合わせた「量」という概念を一種の基本型として導入すると、様々な測定の場面において有用となります。

この図では量の属性として数量や単位が示されていますが、量に対して数値および単位を関連づけることによって表現することも可能です。

では、例とそのオブジェクト図を示していきます。

例1 185ポンドの重さは185という数値とポンドという単位を持った量として表現できる。

例2 80ドルは80という数値とUSドルという単位で表現される。

第3章 観測と測定 その1 − イントロ −

 第3章では、実世界のものや事象についての情報を記録していく際に、どのように対象とする情報をモデル化するかについて議論されます。この章のモデルの内容は、医療分野において要求される複雑な測定や観測をモデル化した際の知見をもとに構成されているとこのことです。(M. Thursz, M. Fowler, T. Cairns, M. Thick, G. Gold, "Clinical systems design," In Proceedings of IEEE 6th International Symposium on Computer Based Medical Systems, 1993.)

挙げられている重要概念は以下になります。順番に見ていきましょう。

重要概念 量、単位、測定、観測、観測概念、現象型、連想関数、否認された観測、仮説

第2章責任関係 その10 − ポスト −

 組織においては業務や責任が特定の人物ではなく、ポスト(役職)に割り振られていることがおおいです。このような場合、図2.15のように、パーティのサブタイプとしてポストを導入することで、そのポストにかかわる業務や責任をポストに結びつけることができます。

 本文中の例をオブジェクト図としてあらわしたものを図2.15.a、図2.15.bに示しておきます。

例1 Paul Smithは大容量製品開発チームのチームリーダである。このことを大容量製品開発チームのチームリーダのポストへの就任として表現できる。このポストは大容量製品開発チーム(パーティ)を管理するという責任関係を持つ。Paul Smithは、このポストに対して、(就任という型の)別の責任関係を持つ。


ある特定の人が特定のポストへ就任しているということも、責任関係を用いて表現されてますね。

病院の移植医というポストには、業務記述に1年で50件の腎臓移植と20件の肝臓移植を行うこととされている。このポストは、50件の腎臓移植と20件の肝臓移植の2つの「手続き範囲」と、病院との責任関係を持つ。

第2章責任関係 その9 − 業務範囲 −

 操作レベルにおける個々の責任関係に付加的な情報を与えるため、"業務範囲"を責任関係に関連付けます。図2.14のモデルにおいては、業務範囲は抽象クラスとなっており、その実体はサブクラスにおいて定義されます。


本文中の各例とそれに対応したオブジェクト図を示しておきます。なお必要に応じて図2.14において明示的は示されていないモデル要素も含めています。

例1 ロンドンの南西部で1年に20件の肝臓移植をすることになっている肝臓外科医の場合、20という数量と肝臓移植という「手続き」とロンドン南西部という場所で規定された雇用という責任関係が「手続き範囲」にある。


例にある1年という部分がこのオブジェクト図ではあらわされていませんが、ある特定の1年間を示す期間のインスタンス(例えば"2011年の1年間")を責任関係とリンクさせることで表現できると思います。

例2 糖尿病治療チームはレッドシールド保険管理会社と責任関係にある。この責任関係にはインシュリン依存の糖尿病患者という観測概念と西マサチューセッツという場所で規定された「臨床治療範囲」がある。

観測概念については、第3章で詳細に議論されるものと思われます。

例3 ACM社は、1年間でジャワ産コーヒ3000トンとスマトラ産コーヒ2000トンを輸入する契約をインドネシアコーヒ輸出(ICE)社と締結した。このことは、ACM社とICE社の間の1年間の責任関係と、3000トン/年のジャワと2000トン/年のスマトラという2つの「資源供給」として記述されます。

例4 John Smithは1100型と2170型ファミリの大容量コーヒメーカをACM社で売っている。彼は1100型と2170型をニューイングランドで、2170型をニューヨークで売る。彼は、「販売区域」が3つ(ニューヨークでの1100型、ニューイングランドでの1100型、ニューイングランドでの2170型)ついた雇用責任関係をACM社と結んでいる。

第2章責任関係 その8 − 階層責任関係 −

 ここ(2.7 階層責任関係)では、抽象度の高い概念である責任関係型をサブタイプで分類し、サブタイプのレベルに置いてモデルを詳細化することで、アロマコーヒメーカ(ACM)社の様なレベルを持った階層型の組織構造(事業部-地域-部門-営業所)や、医師と患者の間の責任関係(患者の同意)などをより厳密に記述していきます。
 図2.11から図2.13まで順にモデルを精緻化しているようですので、3つ並べて示しておきます。



ここで述べておかないといけないのは、この3つのモデルはどれも間違ったものというわけではなく、必要に応じて使い分けることが重要であるということです。
 図2.13について述べると、ACM社の様な階層型の組織構造はレベル付き責任関係型として、医師と患者の間の患者の同意については方向付き責任関係型として記述されるのかなと考えています。
 なお、レベル付き責任関係型と階層責任関係型の違いについてはまだいまいちピンと来ていません。特に階層責任関係型が何をあらわしているのかがきちんとつかめていないので、オブジェクト図を書きつつ、わかったきたら後日報告したいと思います。

第2章責任関係 その7 − パーティ型の汎化 −

 そろそろ内容も難しくなり、エプシロンみたいに知った風して語ることもできなくなったので、これからは、分からないところ、疑問に思うところ、迷っているところなどなど吐露しながら散文体で書いていきます。

 図2.10は以下のようになります。

ここで、原著の方には"責任関係"が示されていませんが、責任関係型への制約(ノートに表示)と整合性と取るため責任関係を追加しています。
 図2.10は基本的に図2.9と同様の構造となっていますが、知識レベルのパーティ型に汎化-特化の関係、つまりスーパータイプとサブタイプの関係を持てるようにしたものです。スーパータイプ-サブタイプの関係としては、例えば、医師と一般開業医の関係などが考えれれますが、このモデルでは、スーパータイプである医師に関係した責任関係型(とそれに付属する様々な特性)は、当然サブタイプとなる一般開業医にも引き継がれることを示しています。
 一般開業医であるEdwards医師と患者であるJohn Smithとの責任関係についてのオブジェクト図を図2.10.aに示しておきます。一般開業医からそのスーパータイプとなる医師への関連をたどって、Edwards医師とJohn Smithとの間の患者の同意という型の責任関係が導出されていることに注意してください。

閑話 − パワータイプ −

 この「アナリシスパターン」、パワータイプ(powertype)が重要な役割を持っているようです。
UMLの仕様書のひとつUML 2.3 Superstructure Specification (http://www.omg.org/spec/UML/2.3/)にはパワータイプの例として次の図が示されてます。

 Tree SpeciesがTreeのパワータイプとなっています。なお、図中の破線は私の方で追記してみたものです。「アナリシスパターン」に従えば、破線より上の部分が知識レベル、破線より下の部分が操作レベルに相当しているのだと思います。