第2章責任関係 その9 − 業務範囲 −

 操作レベルにおける個々の責任関係に付加的な情報を与えるため、"業務範囲"を責任関係に関連付けます。図2.14のモデルにおいては、業務範囲は抽象クラスとなっており、その実体はサブクラスにおいて定義されます。


本文中の各例とそれに対応したオブジェクト図を示しておきます。なお必要に応じて図2.14において明示的は示されていないモデル要素も含めています。

例1 ロンドンの南西部で1年に20件の肝臓移植をすることになっている肝臓外科医の場合、20という数量と肝臓移植という「手続き」とロンドン南西部という場所で規定された雇用という責任関係が「手続き範囲」にある。


例にある1年という部分がこのオブジェクト図ではあらわされていませんが、ある特定の1年間を示す期間のインスタンス(例えば"2011年の1年間")を責任関係とリンクさせることで表現できると思います。

例2 糖尿病治療チームはレッドシールド保険管理会社と責任関係にある。この責任関係にはインシュリン依存の糖尿病患者という観測概念と西マサチューセッツという場所で規定された「臨床治療範囲」がある。

観測概念については、第3章で詳細に議論されるものと思われます。

例3 ACM社は、1年間でジャワ産コーヒ3000トンとスマトラ産コーヒ2000トンを輸入する契約をインドネシアコーヒ輸出(ICE)社と締結した。このことは、ACM社とICE社の間の1年間の責任関係と、3000トン/年のジャワと2000トン/年のスマトラという2つの「資源供給」として記述されます。

例4 John Smithは1100型と2170型ファミリの大容量コーヒメーカをACM社で売っている。彼は1100型と2170型をニューイングランドで、2170型をニューヨークで売る。彼は、「販売区域」が3つ(ニューヨークでの1100型、ニューイングランドでの1100型、ニューイングランドでの2170型)ついた雇用責任関係をACM社と結んでいる。